2013年8月3日土曜日

iPPO fes.2013 九州ご当地アイドルグランプリ


 佐賀県唐津市虹の松原といえば日本三大松原のひとつに数えられる名勝。唐津湾をぐるりと囲む砂浜沿い5kmにわたって伸びるクロマツ群生林は北部九州人にとって馴染み深いドライブスポットになっている。馴染みのない方にはあの「からつバーガー」発祥の地といえばピンとくるだろうか。くるかなあ?
 今日はそんな虹の松原に九州のご当地アイドルが集結し、なにやらバトルを繰り広げるということで〜そしてそんな先の読めない騒乱に糸島PR隊Lovit's!も参戦するというので〜観にいってきた。

 予報によれば本日の佐賀の天気は晴れマーク、気温は余裕で30度を越えてくるらしい。
 ボランティア氏の誘導に従って特設駐車場に車を停め、会場となっている国民宿舎・虹の松原ホテルのほうへ向かうと・・・「こちらからどうぞ!」なぜか松林のなかを延々歩かされるハメに。どういうことだ。へびやむしが怖いじゃないか。

    5分ほど松林のなかをさまよい、ようやく虹の松原ホテルに到着。
 屋外に設けられた入場テントで本日のパンフレットと投票券(アイドルグランプリの投票につかうもの)を受け取り、リストバンドを手首に巻いてもらってやっとこさ会場に入る。
 カレー、冷やしうどん、占い、3Dアート、中南米ビール・・・まるで唐津色皆無の出店がたち並ぶ物販エリアを抜けると砂浜の真ん中にリングが見え、他にステージらしきものはない。
 ってことは、今日はあそこで歌うのか。
 ・・・最高じゃないか。

 今もそのリングのうえでどこかのアイドルさんたちがリハーサルの真っ最中。曲は季節感まるで無視のももいろクローバーZ「サンタさん」だ。ミスマッチにもホドがある「♪サンタさんさんさん・・・」が燦々照りつける太陽のした、灼熱の砂浜、まばらなお客さんのあいだを熱風に乗って吹き抜けていく。
 なんかこう、今日のイベント、いろんな意味でヤバいんじゃないかしら・・・と思った次の瞬間、曲が「ワニとシャンプー」にチェンジ。「ヤバイ!ヤバイ!マジでヤバイ!」たしかにその通りだ。これはヤバい。ヤバい。マジでヤバい。

 正午前、開会式。
 福岡吉本所属タレント・ケン坊田中さん(温泉ソムリエの資格を持つ)が本日のメイン司会者として登場。
 ちなみに俺、高三の席替えのとき担任の先生から「そこの席、ケン坊田中が座っとった席ぞ!」と言われたことがあるが、どんなリアクションを返していいかわからなかった。
 ケン坊田中さんに招かれ謎のおじさん(フェスの実行委員長だそうだ)がリングにあがり、「iPPOフェスは一歩踏みだす人を応援しています」みたいな今日の企画趣旨を説明する・・・も、みんな暑さでグッタリして聞いてない。というか、そもそものオーディエンスからして少なく、ひょっとしたらスタッフ&ボランティアさんのほうが多いんじゃないかと思える客入り。ヤバい。ヤバい。マジでヤバい。

 開会式が終わると次は九州プロレス主催「子供プロレス教室」が始まり始まり。
 講師として筑前りょうた太選手と、めんたいキッド選手がリングにあがる。めんたい選手「プロレス流にいえば今日の観客動員数は・・・」筑前選手「1200人!」・・・いいなあ、そういうの大好き。
 ちなみにめんたい選手の好きなアイドルはwink、筑前選手の好きなアイドルは藤井一子だそうだ。筑前選手、シブいっすねえ。

 「プロレス教室」といっても内容は全然本格的なそれでなく、ロープに投げられたあと帰ってきてリング中央で決めポーズしてごらんなさい、という言わばネタコーナー。しかも会場にほとんど子供がいないので、大人の参加もアリということになった。
 このあたりからだんだんこのイベントのユルさが快感になってくる。
 アイドルグランプリなんていうから殺伐としたものを予想してたのに、このハンドメイド感、そしてイイ意味での底抜け感、かなりいい。車で来ちゃったから飲めないのが悔やまれる。
 教室が終わるとそのまま「九州プロレス特別興行 第一試合 玄海VSキシャーン」の試合がスタート。玄海がブレーンバスターで勝利。拍手拍手。

 13時、いよいよ「九州ご当地アイドルグランプリ」が開演。
 先だっての開会式において、まずは司会者より投票方法の説明〜携帯にiPPO fes.専用アプリをインストールすると「投票タイム中に振った回数がポイントになります!」〜があった。う、うーん。もっとシンプルな方法はなかったんだろうか。
 汗だくでインストール。 しぶしぶインストール。
 「物販でお買いもの500円につき投票券を1枚さしあげておりますので、そちらもご利用ください!出店ブースはこちら唐津のご当地キャラ"唐ワンくん"の紹介ブース、観る向きで色が変わるホログラムアート、小さいお子様むけのおもちゃ、食べ物もカレーにスペアリブなどございます!」・・・お買い物しづらいよ!!こんな暑いのにカレーにスペアリブって!ホログラムアートって!

 ちなみにこれ、1位になったグループには糸島で毎年9月に開催される音楽フェス・サンセットライブの出演権が授与されるのだが、このサンセットライブ、基本的にR&Bやレゲエなどいわゆる「ヨコノリ」系に強いフェスなので(今年の参加グループをピックアップしてみるとDef Tech、RIP SLYME、EGO-WRAPPIN、在日ファンク、SOIL&"PIMP"SESSIONSなどなど)アイドルの入る込む隙は基本的にないんじゃなかろうか。正直、出演してもそんなに旨味はないというか、開催地糸島のご当地アーティストとしてLovit's!が出演してようやくキレイにおさまるかな、ぐらいのものだと思う。
 しかし「九州ご当地アイドルグランプリ」という賞レース自体が重要なのか、今回は九州各県からなんと9組ものグループが参加の名乗りを挙げていた。
 まずは大会開始に先立ちそれぞれのチームの代表がリングへ。
 「世界の平和をまもるため海からやってきた。海をまもる婦人警官・・・宮崎代表マリーンキス!」
 いきなり、しょっぱなからすごいのが・・・。

 おなじ宮崎からは「南国青空学園のアイドル・・・SAKI with UP jr!」もエントリー。
 長崎のさな・せな・ぼなも凄い。首から下はアイドルっぽいっちゃぽいが、その、まあ、なんと言えばいいのか、なぜか顔が描かれた紙袋をかぶっておられる。
 話すことができないため、普段は筆談で意思の疎通を図られているそうだが、今日だけその魔法がとけて喋れるようになったって。
 そ、そうなんだー。

 福岡からはSmileと我らが糸島PR隊Lovit's!(代表してリーダー・あきほちゃんがリングイン)、ときめき☆アイドル学園演劇部、I'S9が参戦。あとは佐賀県Pinky Skyに大分のSPATIO・・・なんというかもう、コンセプトから方向性から全員バラバラで、代表がリング上が並んだ光景はアイドルフェスというより異種格闘技戦のごとしであった。

 13時。トップバッターは「ときめき☆アイドル学園演劇部」。寡聞にして全く存じあげないグループである。
 さきほどリングにあがった代表者がマトモな衣装を着ていたので、ああ、彼女たちは正統派サイドの人々なのだな、と安心していたら・・・なんとメンバー全員がタイガーマスクの覆面をかぶってリングインしてきた。こ、これはバカだ(褒め言葉)。
 シチュエーションに即してロープを効果的に使ったパフォーマンスを繰りひろげたり、サービス精神だけでいえば他を遥かに圧倒していたかも知れない。俺が主催者ならこういう人達にメシをおごりたい。

 続いて登場したのは宮崎代表Marine Kiss。メンバーは総勢5人、中学生と小学生の混成グループだそうだ。
 さきほど「世界の平和をまもるため海からやってきた。海をまもる婦人警官!」と紹介された女の子たちがどんなステージをみせてくれるか気になるし、彼女たちの手でリングに放り込まれたナゾの収納ボックスの用途も物凄く気になる。
 一曲目はももいろクローバーのカバーで「ワニとシャンプー」。
 ああ、リハでヤバい!ヤバい!歌ってたのはこの娘さんたちだったのか。続いて「わたしたちからプレゼントがあります!」「まだまだ夏だけど、『サンタさん』!」
 季節感まるで無視のももいろクローバー「サンタさん」があらためて灼熱の砂浜に響きわたった。あのハイテンションなクリスマスソングは冬に聴くからあの快いのであって、こんな状況下でやられるともはや暴力だ。
 「♪Marine Kissのぉ〜ちょっといいとこみてみたい〜〜」
 おっ、そこ変えてくるか。みたいみたい、是非ともちょっといいとこみてみたい!
 ダダダーッと件の収納ボックスに駆け寄るMarine Kissの皆さん。・・・その中から風船をとりだして・・・それでバルーンアートをこしらえはじめた!これがMarine Kissのいいところ!「サンタサンタサンタ!」と叫びながら、照りつける太陽のしたでギュムギュム風船をねじまげていく少女たち。間奏の「ちょっといいとこ」みせられるタイムは限られているから、それまでに仕上げようととにかく必死だ。狂気! 
 超ハイスピードでこしらえた金魚 (の、ようなもの)バルーンを得意げにかかげると、再びそれを箱に戻し「日本じゃ真冬のクリスマス〜、佐賀じゃ真夏のクリスマス〜」そこも変えてきたかー。 いやその、佐賀というか、唐津というか、そのリングのうえだけクリスマスのような気がしなくもないんだけどー。
 で、原曲通りここから「ココ夏」パートに入るわけだが、入るわけだが・・・そのまま「♪かっきごおり、いっちごあじ」ホントの原曲につないだよ!季節がまるっとポールシフトだよ!と驚いてたら「ココココーコ、ココナーツ!ココココーコ、ココナーツ!サンバサンバサンバサンサン・・・」えっ!また『サンタさん』に戻るの!?
 「メリークリスマース!」ああ、やっと終わった。
 他人のふんどしとはいえよく盛りあげたよ。
 「では皆さんもう一回いきます!ココココーコ、ココナーツ!」もっ、もういいよ!エクステンデッドにもほどがあるよ!
 「サンタさん」「ココ夏」を2回交互に繰り返してMarine Kissの7分を超える狂熱のパフォーマンスは終了。予想以上にヤバかった。
 最後の曲もやっぱりももいろクローバーで「走れ!」。
 ご当地色を全く打ちだすことなく100%ももクロ推しで攻めたのはある意味潔いというかなんというか。

 続いて本大会参加グループ随一の怪奇派・長崎県佐世保市九十九島代表さな・せな・ぼなが登場。
 一曲目は「渚のシンドバット」。彼女たち(言い忘れてたが、三人組)の異様な風体を前に「懐メロカバーかよ!」と突っ込むのもなんかズレてる気がするし、突っ込んだら突っ込んだで負けのような気がするし、なんてムダに悩ませてくる人たちなんだ。
 しかし、歌はめちゃくちゃ上手い。
 顔をだせない理由はわからないが、歌のうまさ、滑舌のよさ、淀みないトーク、全てにおいてそこはかとなくプロフェッショナル臭が漂い、もしかしたら私たちが普段テレビでみている誰それが世を忍んで袋をかぶりこうした活動を行っているんじゃないか?とまで思わされたりして、なんだか夢が膨らむなあ。
 今日のメンツのなかで自分たちが浮いていることはハッキリ自覚しているらしく「私たちが浮いているから他のアイドルが光る!」と尊い自己犠牲精神をアピールしていた。
自己紹介コーナーが終わると次はキャンディーズのカバーで「春一番」・・・さっきの「サンタさん」といい、なんでこうも季節をないがしろにしますか。 夏の曲なんてそれこそたくさんほどあるでしょうよ!

 あまりにクレージーな世界観にちょっと疲れてしまったので波打ち際へ逃避。
 ああ、海はいいなあ。平和だなあ。
 振り向くと、運営本部テントの裏でケン坊田中氏(九州観光マスターの資格を持つ)が無の顔でアクエリアスをグイッとあおっていた。

 MCコーナーで「長崎県佐世保市九十九島にドリームアイランドという妖精の国があり、アイドルになりたい三人組がそこで毎日踊っていたのだけれど、ある日妖精の国の掟を犯してしまい仮面をかぶせられてしまった」と壮絶なオリジンを語ったさな・せな・ぼな。
 それに全力で「そんなのいいから佐世保のいいところやおいしいものを紹介してください!」とツッコむケン坊田中氏。
 ごもっとも。

 福岡筑豊地方代表Smileが登場。
 なぜかこのタイミングでケン坊田中氏が「僕も元祖福岡ご当地タレントですから」と、ショウビズの先輩ならではの訓話を語りはじめる。
 「最初カンニング竹山と『ター坊ケン坊』というコンビをを組んでました。同期には華丸大吉もいて、みんなで『福岡でがんばっていこう!』って言っていたのに、気づいたら僕ひとり取り残されてました」 
 ・・・気温が心無しかグッとさがったぞ。
 つかのまの冷感剤としては有り難かったが、前説としてそれはダメなんじゃないか。
 そんなケン坊田中氏のネガティブな前振りを受けてリングインしたSmileの皆さん。タイガーマスク、悪のり海上警察、袋をかぶった妖精と前任者がハードな奴らばっかりだったこともあって、「やっとまともなのがきた!」感がすごい。
  一曲目は「め組の人」。な、なんだ。そのチョイス。
 続いて「年下の男の子」。な、なんだ。さっきから続くキャンディーズ攻めは。
 最後のオリジナルソング「Smile」はオールディーズの雰囲気漂うフレッシュでメリメリな名曲。なんだか、ようやくまともなアイドルソングを聴いたような気がする。

 ケン坊田中氏を交えてのトークコーナー。Smileは飯塚観光協会が認定した飯塚PR隊だそうで、ということは本大会におけるLovit'sの実質的ライバルといってもいいのかもしれない。異様な出自の説明に全ての持ち時間を費やしてしまったさな・せな・ぼなと違って、ちゃんと飯塚名物ひよこまんじゅう、チロルチョコなど紹介していた。
 投票タイムではそれまでオトナっぽい雰囲気を漂わせていたメンバーたちが一転必死になり「パパ!おねえちゃん!ママ!(携帯)ふって!」とギャーギャー騒いでいたのもよかった。
 ちなみにこの投票タイム、BGMが「天国と地獄」なので運動会感がもの凄い。
 そしていよいよ我らが糸島PR隊Lovit'sが登場する。
 今回は特殊なシチュエーションなので、いつもの「いまから〜」がなかったが、出囃子にのってひとりひとりロープをくぐりリングインしてくるさまがかなり楽しい。なかなかそういう経験って出来ないもんな。俺もやったことないから憧れる。
 今日はメンバー9人のなかから6人(あきほちゃん、あさきちゃん、あんぬちゃん、なるなる、さとみちゃん、あみなちゃん)が出陣。チケットに「絶体一位」(原文ママ)の一筆を入れてくれたひびきちゃんは夏期ホームステイへ行っちゃったそうで、本日は残念ながら欠席されていたが、僕の持つチケットのなかでひびきちゃんの意思はしっかり息づいている!がんばれ、Lovit's!絶体一位!
 一曲目は「Magic Island」。この夏何回聴いたかわかんないけど、やっぱりいいなあ、はぁ〜。
 唐津といえば糸島のすぐ隣。海の色・香りが近いぶんそのマジックも全然減じてはいなかった。
 自己紹介に続いて「私たちがお世話になっているLinQさんの曲を2曲続けて聴いてください!」沸きあがる会場、さすがLinQは人気あるのだなあ。まずは 「ゴーイング・マイ・ウェイ」、そして「チャイムが終われば」。いやはや、もう現時点最高の盛りあがりを記録している。この「盛りあがってる感」も審査員の評価に繋がりそうだ。いける、いけるぞ。
 そして最後は「いとくると」。
 ・・・勝ったな、これ。 
 いや、贔屓目を抜きにしても今のところダントツでステージ、パフォーマンスともに素晴らしかったのだ(その「今のところ」がヒトクセもフタクセもありすぎるから参考にならないんだが)。もちろん、観客受けも。
 なんというかね、誤解を招く表現になるが断然「アイドル」してたのである。

 ケン坊田中氏を交えてのPRコーナー。
 メンバー全員で糸島のいいところ(「牡蠣」「そうめんちり」「人が優しいところ」「いちご、あまおう」「ハマボウの花」「自然が豊か」)をテンポよくアピール、時間内にきっちりおさめててこのあたりもきっと高評価ですよ。
 あとはこちらが頑張る番だ。投票スタート!
 というわけで、いいオトナが必死こいて携帯をシェイク!シェイク!シェイク!
 さっき「ときめき☆アイドル学園演劇部」の投票タイムで軽く練習してみたら80ポイントも叩きだせたので、もうちょっとがんばれば100ポイント、いや倍の160ポイントは全然いけるハズ。
 ぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶん。「そこまでー!」

 「6」
 いやいやいや、「6」はないだろう。
 でも「6」って表示されてるよ。
 わっはっはわっはっは・・・これだから俺はITベンチャーが嫌いなんだ!

 ちなみにこの投票タイム、これまでの出場者がこぞって「自分たちに票を入れる」よう最後のお願いを叫んでいたのに対し、我らが糸島PR隊Lovit'sだけが「糸島いいところですよ!」「いちごおいしいですよ!」と全力でホームタウンを猛アピールしていた。どうだ、このピュアっぷり!どうだ、この糸島愛!参った!優勝!

 糸島PR隊のまっすぐさにノックアウトされ、「6」ってどういう体たらくだよ、このまま唐津の海に入水しようか・・・と俯きながらトボトボ徘徊していると、前方から虹の松原に住まう守護神、にじまつまもる君が近づいてきた。手(枝)に持っているナゾの物体をよくみると・・・バルーンアート!そ、そうか。Marine Kissに貰ったんだね・・・。
 ちなみにせっかく紹介ブースを用意してもらいながら唐ワンくんは本日不在。なまいきな!

 そのあとも宮崎県が送りこんできた二組目の刺客、南国青空学園(架空)のアイドルSAKIちゃんとナゾのボーイズ三人組「UP jr」からなる、一風変わった(反則ともいえる)編成のグループ・SAKI with UP jrや、最初に発行されたiPPO fes.のチラシにはその名前が載っていなかったナゾのベテラン・佐賀県代表Pinky Skyなど色んな意味で濃い人達がたくさん出てきたが、もう疲れたので割愛
 SPATIOとIS'9はちゃんとしていたので割愛
 以上で全てのグループの出し物、いやステージが終了。

 「(出店で貰える投票券の)投票締め切りまであと10分です!」のアナウンスが夕刻のビーチに響きわたる。
 さきほど各グループの投票バケツをチラ見しにいったら、Lovit's!のそれ(「糸島のこと、愛しとーけん、みんなもしてくれんかいな?Love Itoshima♡の手書きメッセージ入り、優勝!)に「あれっ、これマジで優勝するんじゃない?」と思えちゃうほどたくさんの票が入っていたので、気持ちはけっこう楽だったり。
 ときめき☆アイドル学園演劇部やMarine Kiss、SPATIO、I'S 9の皆さんが声をはりあげ「最後のお願い」行脚に勤しんでいるなか、Lovit's!は・・・ビーチのすみっこでのんびり歓談しており、このグイグイいかない感じもまたいい。ということは、つまり、ファンの僕も余裕こいててイイってことだ。どんと構えておこう。
たとえ負けたとしても、そんなの全然気にならないぐらい楽しいイベントだったので祝杯用にペルーのクスケーニャ・ビール(やはり唐津のかけらもない)を購入。ほら、どんだけ楽しんだかが大事だからさ。こんなのあんまり必死になるもんじゃないっすよ。
 「残り30秒です!」とケン坊田中氏が彼方のリングで叫んでいる。
 ふむ。
 「じゃあ投票券と・・・レシートはどうしますか?」
 「・・・けっこうです!」おばさんの手からビールをひっつかむや俺ちゃん、ビーチへ猛ダッシュ!
 「残り10秒!・・・5!4!・・・必死です!めっちゃ走ってる人がいます!」とケン坊。そりゃ走るよ!Lovit's!の喜ぶ顔がみたいじゃないか!

 なんとかギリギリセーフでLovit's!の抱えるバケツに投票券をシュート(よく考えたら電子受付じゃないんだからそんな厳密に急ぐ必要もないんだよな)!「すっごいすべりこみで投票が入りましたー!」といらぬ実況をするケン坊を背に、ぜえはあぜえはあ。もうだめだ、へろへろだ。せっかくLovit's!の皆さんたちから「ありがとうございました!」の声を貰ってるのに、恥ずかしくて顔をあげることができない。
 「いえいえ・・・」と返すのが精一杯。どうかこれで「6」を許して欲しい。

 結果発表、のまえに「九州プロレス iPPO fes. 2013 スペシャルマッチ・メインイベント」~筑前りょう太&めんたいキッド vs 田中純二、阿蘇山~の60分一本勝負が催された。
 キリリとふんどしを締め込んだ田中純二選手と、頭が火山(ちゃんと煙がでる)になっている阿蘇山選手がヒールだ。田中純二選手、いかにもなイカツい眼光でとにかくワルそうである。
 しかしリングアナウンサー氏が「福岡県糸島市出身~田中純二~!」と怒鳴るや、一般客用休憩ブースでまったり休んでいたLovit's!陣営から「おお~!」とあまりにわかりやすい歓声があがった。
 な、なるほど・・・!
 一瞬でホームタウンを軸に選手と観客が結ばれてしまう感じ、実にプロレス的だ。

 ひょんなことから生じた強い結託。田中純二選手が攻撃を受けると、観客の9割はベビー側の華麗なムーヴに拍手喝采を送るのに、Lovit's!陣営からは逆に冷たいブーイングが沸き起こるという珍事態。
 ヒールターンしたLovit's!なんてなかなか観れるものじゃないからドキドキする。あと、ブーイングのたびに筑前選手&めんたい選手がチラッチラッと糸島テントを睨みつけているのもドキドキする。
 おっと、両チームもつれあって場外へ。これはイヤな予感がするな。

 試合内容そのものより、はじめてプロレスに接するであろうアイドルさんたちの生の表情(素の驚愕顔とか)&リアクション(ステージでは聞けないような低い声で「おお~」とか)にヤラレて、そっちのほうばっか観察していたのだが、レスラーたちが場外乱闘をおっぱじめたおかげで事態はよりこっち好みの展開に。
 まずは阿蘇山選手がI'S 9のいちばん小柄なメンバーを捕まえ、その小さい身を盾に築前選手の攻撃から身を守る。悲鳴をあげながら逃げ惑う他のメンバー。助けなさいよ!
 めんたいキッド選手は田中純二選手を捕らえてノッシノッシとLovit's!テントへ。よほどブーイングが腹に据えかねていたのだろうか。脇見もせずにノッシノッシ。
 テントのなかではLovit's!の面々がこれから何が起こるかも知らず、狂信者の如く「純二!純二!」コールを繰り返している。
 「純二!純二!純二!」テントのまえにたちはだかるめんたい選手。
 次の瞬間、めんたい選手が田中純二選手(175cm、85kg)をテントのなかへドーン!と放りこんだ。

  一瞬にしてテーブルのうえのおうどんや飲みさしのお茶がひっくりかえり、軽めの地獄絵図と化すLovit's!テント。
 大騒ぎするメンバーを置き去りにして、その後もレスラーたちはMarine Kissを追い回したり、Smileを威圧して「ガチの恐怖顔」をひきだしたり、物販でそれどころではSPATIOブースをちゃんとスルー(さすがだ)したりと悪行を繰り返し、やるだけやって揚々とリングに戻っていった。
 いやあ、いいものを観させてもらった。出身も方向性も違うアイドルさんたちが「プロレス、こわい」でひとつにまとまった瞬間である。
 試合は筑前りょう太&めんたいキッド組の勝利。
 「アイドルもよかですけどプロレスもよかでしょう!」と、イイこと言っためんたいキッド選手に盛大な拍手が送られる。
 満場の喝采を浴びながら威風堂々とリングを去るその後ろ姿に、 Lovit's!あんぬちゃんだけが「うどんのこと謝らんか!めんたいキッド!」と憤りの言葉を投げかけていた。

 さて結果発表。開会式同様、登場したグループの代表がまたもリング上で横一列に並ぶ(なぜかさな・せな・ぼなだけ不在。妖精島の門限の都合だろうか)。
 しかし終わってみたら終わってみたで、タイガーマスクかぶって歌ったやつ、「サンタさん」歌いながらバルーンアートつくったやつ、ベテラン、男子と・・・すごいな。ある意味、満足度は高い。

 結果発表を前に、参加者それぞれがそれぞれなりのエモい感傷に浸っていた雰囲気もあったが、ケン坊がなんのタメもなく「優勝は大分代表、SPATIO」と軽々しく発表してしまったため、セレモニーはなんともヌルッとしたものになった。あなたが東京にいけない理由はそういうところではないか。
 ともかく、リングのうえで泣いて大喜びするSPATIOメンバー。はじっこにおいやられるタイガーマスク、バルーンアート、ベテラン、糸島、男子その他・・・いや、きみたちもすごく良かったよ!

 最後に虹ノ松原ホテル社長よりご挨拶。
 こんなヘンテコなイベントなのに社長はいたく満足なさったようで「やってよかった!」とものすごく感無量げである。さらに「アイドルの方、スタッフの方、ボランティアの方、今日は手弁当で参加してくださってほんとうにありがとうございます!」と衝撃のひとこともドロップ。ノーギャラだったのかよ!そんなの聞いちゃったらマジで参加グループ全員好きになるよ!

 社長の謝意はとどまるところを知らず、グランプリにエントリーしたグループのメンバー全員に虹ノ松原ホテルの宿泊券を贈与します!と、ふとっぱらすぎる参加賞までプレゼント。おお、サンセットフェスの参加権なんかより絶対そっちのほうがいいじゃん。
 唐津湾が一望できる絶好のロケーションと、新鮮な活きイカの活き造りや佐賀牛など、絶品の旬味づくしが堪能できる素晴らしい宿である。全室Wi-Fiも完備されている。最高じゃないか。

 いやあ、始まるまえはものすごい苦いイベントになるんじゃないかって危惧してたけど、ホントに、ヤバいぐらい面白かった。また来年も、どうかプロレス込みでやって欲しい。


 大会終了後、Lovit's!のスタッフさんに「来年あったらまた出ますか?」と期待を込めて伺ったところ「出なきゃならんでしょうね」と力強いお答えがかえってきた。
 さすが!
 「そうなるとメンバーも増やさないかんですね」
 「・・・えっ?」

(初出:2013年8月29日〜9月6日配信)