2014年9月21日日曜日

福田こうへい歌謡ショー


 アイドルというフィルターを通して糸島の魅力をポップにキュートにひろく伝える存在といえば、せーの、「える!おー!ぶい!いー!いとしまらびっーつ!」でーすーがー、実は彼の地は演歌のひときわ盛んな土地であったりもする。
 伊都文化会館のまえを通るたび大物演歌歌手のコンサートやカラオケ大会の告知ポスターを目にするのは、そういう文化がしっかり根づいてることの証と云えよう。
 で、そんな豊かな土壌があるから、この街からはモノホンの演歌歌手も当然産まれている。

 まず、糸島を代表するスターとして、ひょっとしたら篠田麻里子さん以上の活躍をされているかも知れないのが「手の届くアイドル演歌歌手」こと山内惠介さんだ。このかたは日本全国津々浦々をまわって1年間に120回もの営業(握手会)をこなし、フィギュアつきDVD-BOXは予約開始とともに瞬殺完売、天下の松竹で主演映画「山内惠介・THE歌謡ムービー昭和歌謡危機一髪!」までつくられてしまった、名実ともに"演歌界の貴公子"である。
 これらの活躍によって糸島市長から直々に「糸島ふるさと大使」の任をまかされ、日々"ふるさと"のPR活動に勤しんで〜ディスコグラフィみたら「流氷鳴き」「風蓮湖」「釧路空港」・・・って北海道関係の曲ばかりなんですけどー!〜おられるようだ。
 ちなみに今年のどんたく前夜祭には、この山内惠介さんと今をときめくRev. from DVLがゲストとして呼ばれていたのだが、実にそのファン比率&熱量、誇張なしの1:50で山内惠介さんクラスタが圧倒していた。ファンのおばちゃんたち、すごかった。

 そんな山内惠介さんを糸島演歌界"ピンからキリまで"の"ピン"とすると、"キリ"にあたるのが本多あきらさん・・・といっても全然ピンとこないだろう。
 この人はかつてジャッコ、ないしは伊都ジャス(正式名称・イオンモール福岡伊都)の近所で「I am Dog」というペットショップを経営していたドッグトレーナーで、タブロイドによれば自らデヴィ夫人の愛犬もなされていたとされる。
 彼も(おそらく"飼い主"によるバックアップのもと)2008年にホスト演歌「男の浪漫」で演歌界に殴りこみをかけ・・・ようとしたところで、長崎バイオパークからリスザル、カピバラ、フンボルトペンギンを盗んでいたことが発覚、あえなく御用となった。
 売買目的で犯行に及び、その経過でカピちゃんたちを死なせてしまったのである。ゆるせない。

 このように頂上からドン底まで、振り幅がとってもひろーい糸島歌謡界。
 これほどのレンジがあるということは、やはりその背景には豊潤な大地が広がっているのだろう。
 いつかその空気に触れてみたい、その世界と「背景」を覗いてみたい、と思っていたところ、伊都文化会館で催される福田こうへい歌謡ショー・第一部に糸島PR隊Lovit's!が客演するとの知らせが耳に入った。
 これぞ我が意を得たりまくったりのスペシャル・イベント。行くしかない(実はこれまでにも何度かこういうチャンスはあったのだが、なかなかタイミングに恵まれず行けなかった)。

 不勉強ゆえ、福田こうへいさんも薄ぼんやりとその名前だけしか知らず、一応ググッてみる。
 岩手県出身の福田こうへいさん(1976年うまれ)は、デビュー・シングル「南部蝉しぐれ」で平成25年第64回紅白歌合戦に出場を果たした民謡・演歌界の若きホープだそうで、当時の紅白では紅組代表AAAと対決、白組のリストには三代目J Soul Brothersとサカナクションのあいだに名を連ねていた。
 ふむ。なるほど。
 ・・・これだけでは全然なので岩手の友人に「そちら地元ではどれぐらい人気があるのでしょう?」と伺ってみたところ「イオンのインストアライブ基準で言うとファンモン加藤とタメはれるくらい人気あるよ!」との解答を頂き、まずその基準はなんだ、とか、そのファンモン加藤さんの人気がわからないよ、とか余計にいろいろひっかかってしまったが、とにかく凄い人だということはなんとなくわかった・・・かな。

 入場料は4000円。
 ううむ、おなじ価格&おなじLovit's!目当てでもFukuoka Girls Festivalとはまた違った割高感がある。
 しかし!実は先日赤米鑑賞会にいった際に「まむしの湯」で割引券をゲットしていたので、今回はそれが使えちゃうのだ。
 4000円→2000円。
 いやまあ、それでもけっこうなお値段だけど、価格的にはアイドルさんがいっぱい出演するタイプのイベントに近いものがあるし、そっち系のイベントと構成&出演時間もそんなに変わんないだろうし、なにしろ精神的には既におじいちゃんなので、なにげにこういうイベントのほうが若者言葉でいうところの「俺得」感があったりする。
 なので、全然余裕で払えてしまう金額だ。
 普段、無料で素晴らしいものをたくさんみせて貰ってるので今日ぐらいは、みたいなところもあったりして。

 イオン志摩ショッピングセンターで「秋の交通安全運動」イベントを観たあと、叩き込まれたばかりの交通安全精神を遵守しながら自転車で伊都文化会館に向かう。
 割引チケットには「10時30分より入場券と交換受付」とあったが、「まあ、そんなに急がなくてもいいだろう」と楽観視し、のんびり11時過ぎにイトブン入りしたところ・・・既に長!長!長蛇の列ができてるじゃないの!
 慌てて入場受付窓口に走り「もうこのへんしか空いてないんですよ〜」と提示された席は左側二階席の最奥ブロック。「・・・それで大丈夫です!」
 伊都文化会館はどこからでもステージが観やすい立派なホールなので「大丈夫です!」にウソ偽りはなかったが、まさかここまでの人気とは。糸島演歌ファン(及び、こうへいファン)侮れじ。
 チケットを買ってすぐ「2000円席は完売しました」と書かれた紙が貼りだされ、九死に一生を得る。あぶない、あぶない。

 本日の歌謡ショーは昼の回と夜の回があり、メインの「福田こうへい 歌謡ショー」のまえにはいずれも2時間程度のフロントアクト「地元の皆様の歌謡ショー」が設けられていた。
 Lovit's!はこの「地元の皆様の歌謡舞踏ショー」部分に登場するそうだ。
 入り口で頂いたプログラムには31組(!)の「地元の皆様」の名前と、それぞれが唄う曲目が記されており、最後から4番目に登場するなかなかイイ扱いのLOVit's(原文ママ)さんの欄には「マジックアイランド」(原文ママ)および「糸島市音頭」の2曲からなるセットリストが既に明示されていた。
 こういうカタチでセトリのネタバラシをされるのは初めてだが、この世界のルールではこれが普通なのだろう。郷に入れば郷に従え。実は先ほどの交通安全運動イベントで「マジックアイランド」が聞けなかったことを少し残念に思っていたので、けっこう嬉しい先制予告だったりして(かわりに「なう。」を唄っていたのは"事故を起こさないよう公共の交通機関を使え"というメッセージだったのかしら。自動車でも自転車でも、運転中に携帯をいじったりツイートしたりするのはやめましょう)。

 少し外で時間をつぶし、開演5分前に会場に入ると、なんと既にショウが始まっていた。
 キンキラキンのスーツを着た男性が女性ふたりを傍らにはべらせ、ものすごいイイ湯加減で「博多 唐津よ 波戸岬〜♪」と熱唱している(黒木姉妹「泣かんとよ」)。はてさて、これはどなただろう?とプログラムに目を通すが・・・どこにも男性+女性2人の逆ドリカム体制出演者の名前がない。しょっぱなからこれかよー(あとで一番手の方だとわかったが、プログラムには女性二人の名前しか記載されておらず、ではあの男性はナニモノだったのだろう?このしょっぱなのパンチにより、糸島歌謡界も油断できない世界だと痛感させられた)。

 それにしてもフツーなら「第一部は一般の参加者さんばかりだし、観なくていいかもー」となりそうなところ、会場にはたくさんのお客さんが詰めかけ、やはり演歌に対する関心の高さというかスキスキっぷりがグイグイ伝わってくる。
 出演者それぞれにアツい声援がとび、素人さんといえどファンからおひねりや花束が次々届けられる、なんともホットな空間。

 Lovit's!関連(なのかな)といえば、エントリーナンバー4番の女性が中村美津子さんの「河内おとこ節」を唄っておられて、この曲、ケアプラザ伊都(2014年7月19日)の公演であさきちゃん・あみなちゃん・れなちゃん・あゆみちゃんが御神輿を担いでいたときのBGMだったことを思いだす。あのとき曲名がわからずレポートでは濁してしまっていたので、やっとわかって良かったです。

 良かったといえばエントリーナンバー8番の男性が唄った「あなたのブルース」がことのほか素晴らしかった。矢吹健に1968年度のレコード大賞新人賞をもたらした大名曲〜いまでは夜のワーグナー・藤本卓也先生の手になる解放歌謡のマスターピース〜として知られる「♪あなたあなたあなたあなた、あ〜な〜た〜」が、まさにブルース!といった情感たっぷりの絶唱で紡がれる。
 Lovit's!を観にいって『あなたのブルース』が聴けるなんて、こんな体験もなかなかできまい。いろんな意味で感動した。

 気になったのは、"こういうイベントだからそれにあわせてきた"のか、それとも無自覚のなせる業かわからないが、本日のメインアクトであられる福田こうへいさんの「南部蝉しぐれ」を課題曲に選んでいる人が4組もいらっしゃったことで、えっ!こんなことしちゃっていいの!?とまた門外漢はビックリする。
 これでは御本人が「南部蝉しぐれ」を唄うまえにお腹いっぱいになっちゃうじゃないか。
 SUMMER SONIC14・TOKYOのGARDEN STAGEで例えれば、矢野顕子(トリ)の「春先小紅」をその前の出演者たち〜前野健太→華原朋美→山崎まさよし→LITTLE DRAGON〜がよってたかって歌い尽くしちゃうようなものだ・・・どれも聞き応えがありそうだな。
 逆に、そこでさんざん焦らして「ホンモノが聴きたい!」と思わせる効果もあったりするのだろうか。
 しかしそのあたりもよく考えられていたというか、完全に偶然かも知れないが、おなじ「南部蝉しぐれ」でもそれぞれに歌唱のスタイルが異なり、女性/男女混成15名によるコーラス/男性/女性(オケが民謡バージョン)と、それぞれに飽きさせない趣向が自然と凝らされていた。
 それにしても出演者さんどなたも歌がうまく、こういうところに来たのも初めてなので新鮮さもあいまって、2階席後ろすぎブロックではあったものの、全て食い入るように観てしまった。

 んで、13時も過ぎ、地元青春歌謡の大本命!糸島の若きニュースターLOVit'sが登場する。
 2階席最奥ブロックからでもステージは余裕で観えたが、さすがにその、ここだけはちょっとワガママを云ってみたくなり、会場スタッフのかたに「Lovit's!のときだけ前の端っこのほうで立ち見していいでしょうか」とお願いしたところ・・・快諾して頂きありがとうございます!大感謝!

 登場を前に、暗転したステージの奥で「国宝 内行花文鏡」の文字と原田大六先生が平原遺跡にて発掘された日本最大級の銅鏡が描かれた垂れ幕がするるーんと降りてくるのがみえた。おお、なんだか特別扱いじゃん!

 司会者さんの「大きな拍手でお迎えください!」にホントに大きな拍手で迎えられながら元気よく登場したLovit's!メンバー(れなちゃんとあゆかちゃんが欠席)。
 朝の交通安全イベントではゴスロリ風味バージョンの衣装をお召しになられていたが、こちらではうってかわって皆さん浴衣衣装だ。
 これだけで「そうだよな、やっぱりこの場面では"和"だよな!」と、託されたビデオカメラを放り投げガッツポーズしそうになったが、高価な機材ゆえ我慢我慢。ソフトクリームとか素焼きの植木鉢なら躊躇することなく放り投げてた。

  一曲目は「マジックアイランド」(マイクはひびきちゃん、あんぬちゃん、あみなちゃん)、ずっと演歌で続いてきた流れにいきなり放りこまれたザ・アイドルポップスだが、会場に集まった皆さん、笑顔でステージに手拍子を送ってくれている。おばあちゃんたちからは「かわいい」の声もとぶ。
 しっかりとした照明や舞台装置、音響のなかでみるLovit's!はまた格別。定期公演やイベントとはまた違う、演者さんと観客がかっちりとした演芸の様式のなかで結ばれるような、ものすごくハートウォーミングでスケールのデカい空間がそこにはあった。
 さすがイトブン、糸島のマジソン・スクエア・ガーデン!
 
 続いては「糸島市音頭」。メンバーがマイクを握ったまま立ち位置に移ったので「これは、遂にLovit's!があの歌を・・・!」と一瞬コブシを握ったが、そこはやっぱり門馬良さんの歌唱音源にあわせて踊るスタイル、ですよね〜。
 これもこれで可愛らしくて良いが、ファンとしてはいつかLovit's!歌唱バージョンを聞いてみたいものだ。そうめんそうめん。

 アイドルのイベント会場ではちらほらはっぴを着た方々をお見かけすることがある。
 こちら伊都文化会館の最前にもそんなはっぴ軍団がかたまっていらして、Lovit's!も強い軍団がついたな、と思いながら誰推しかを確認すべくチラッとその背中〜フツー「○○命!」「○○親衛隊」みたいなことが書かれている場所〜を観ると、そこには「国宝」の文字と銅鏡の絵がデカデカとプリントされていた。。
 おそるべし、内行花文鏡親衛隊。
 だもんで「ああ、これはそのうち皆さんでステージにあがって一緒に踊るんだな」と納得したが、意外とそうでもなかった。あがればよかったのに。

 そろりそろりと反対側に廻りこみ、あさきちゃんがベタ褒めしていた「あゆみの投げキッス」(発言ママ)をしかと観る。たしかにかわいかった。そうめんそうめん。
 最後、はけぎわに国宝法被の方々がなにかおひねりらしきものを渡していて超うらやましく感ずる。
 あれ、いちどやってみたい・・・!

 そのあとも全盲の演歌歌手・牧山ひろしさん(キングレコード)の素晴らしい歌声にシビれ、なんだかんだで天神地下街どんたく演舞台において2年連続ステージを拝見している入江みち子さん(キングレコード)の「愛ひととき」はやっぱイイ歌だな、と思ったり、最後まで唸らされっぱなしのコンサートでした。

 帰りがけ、運営スタッフさんに伺ったところ、やはりほとんどの出演者の方々が糸島出身なのだそう。「こんなに唄うのが好きな人々がいる街もあまりないと思うのですが、どうしてですかね?」と兼ねてよりのハテナをぶつけてみたところ「みんな祭り好きだからですかね!わははは!」と豪快な答えがかえってきた。なるほどなあ・・・。

 文化会館の玄関をでて一、二、三歩すすんだあたりで「えっ、答えになってなくね!?」と声をあげてしまったが(いつにもましてニブい)、その"祭り好き=なのでステージに自分もたちたい、何かを表現したい"という血がおじいさんおばあさんにはカラオケ、若者には〜例えば二丈絆太鼓であったり、Lovit's!であったり、またはダンスであったりといったような感じで〜受け継がれているのなら、こんなに豊かな環境もないんじゃないだろうか、と思った次第。
 そして、そのひとつの集大成が、やはり30組近くの団体がステージに登場して歌ったり踊ったりを繰りひろげる「糸島市民まつり」なのかもしれない。
 市民まつりに対する考えが少し、アップデートされた。

 糸島市民まつりはまもなく10月4日、5日に開催されます。
 http://itoshimamatsuri.com/

2014年9月16日火曜日

糸島市民まつりPRイベント(イオンモール香椎浜)



 はじめて「ようかい体操第一」の猛威をマノアタリにしたのは今年3月30日、キャナルシティ福岡で開催されたGFF 2014(Game Fan in Fukuoka 2014)〜福岡市、福岡市に本拠を置くゲーム会社、九州大学らで組織された「福岡ゲーム産業振興機構」主催によるゲームファンイベント〜でのことだった。
 いくつかプログラムがあったが「『妖怪ウォッチ』コーナーを始めます!」の声がかかるや、それまでどこにいたんだという数の子供たちがわらわら集いだし、アッというまにサンシャイン・ステージを占拠、その日いちばんの盛りあがりへと雪崩れ込む。
 司会の漫才コンビ、アシスタントの女性アイドルをハナっから存在しないかのようにスルーして、主人公ケータくん、ルビニャン&ダイヤニャン(の着ぐるみ)をとりかこんではやんややんやの大騒ぎ。
 2択のクイズ大会が始まれば「では、みんなで正解だと思ったほうに手をあげてくださーい」をぶっちぎって口々にガチ解答を連呼、連呼の大騒ぎ。
 そんな光景を目のあたりにして「ええっ、『妖怪ウォッチ』ってこんなに人気あんの!?」と、おなじ妖怪でも1980年代の第二次妖怪ブームに耽溺した旧オカルト少年としては、まあ、子供がそういうのにハマるのも充分理解できるっちゃできるが、水木しげる先生の著した妖怪図鑑にも中岡俊哉先生の著作にも、もちろん鳥山石燕の書画にも登場しない「ジバニャン」「コマさん」のあまりにネアカな姿がなかなか飲み込めない。
 「こんなのよりコケカキイキイのほうがかわいいだろう!」と、心のなかで頭を抱える旧オカルト少年に子供たちの熱狂は少しビターなものにうつった。
 しかし、そんな感慨などよそに彼らの興奮ゲージはますます上昇する一方で、それが頂点に達したのがメインイベントの「みんなで『ようかい体操第一』踊ろう」コーナーであった。

 まずは振りつけを知らないお友達のために指導員のお姉さんが招かれ、基本的な動作を教えてくれることになったのだが・・・そこにいる全てのお子様たち、「そんなもんかったりーよ、早く踊らせろよ」と禁断症状を隠そうともせず、すっかり上気しきった顔でサンシャインステージをウロウロしている。
 それでも職務を果たすべく大声をはりあげるお姉さん。曰く、「ポイントは3つだけ」。
 まずは「ウィッス!」のポーズ。
 なるほどね、と入間市民会館でちびっこ相手に全力の挨拶をぶつける故・いかりや長介さんの姿を思い浮かべながら、在りし日の彼がしたように片手を「ウィッス!」と勢いよく振りあげてみたが・・・これが全然違うじゃないの。
 「ウィッス!」はいわゆるB-BOY STANCEと呼ばれる、腕組んでバシッとキメるあのポーズで、「妖怪ウォッチ」に登場するウィスパーなる妖怪(もちろん、そんなの水木しげる先生の漫画にも中岡俊哉先生の著作にも鳥山石燕の書画にもでてこない)がこういう仕草をするらしい。
 続いては「妖怪のポーズ」。
 これは「両手を天にあげ、膝を曲げる」動作だそうだが、いったいこれのどのへんが妖怪なのだろう。そのまま片足をあげれば水木しげる先生描くところの「おたすけーっ」「うわーっ」の図に見えないこともないが、ううむ。
 ともかく、この動作を「みーぎ、ひだり、まえ2回」。
 で、最後は「ウォッチ」のポーズ。
 いちいちつっかかるのもメンドくさくなったので、シンプルに説明すると、これは左手に装着した腕時計に妖怪メダルを入れる動作であった。
 この3つさえ知ってれば、オッケー・・・だそうだが。

 いざ音楽が始まると「基本の3つ」以外にもたくさんの振りつけがあり、アッというまに置いてけぼりにされてしまった。ちょっと!お姉さん!どうしたらいいんですか!
 そんな使えないオトナをよそに、全ての振りつけをカンペキにマスターしている子供たちは元気よくピョンピョン踊り跳ねている。
 カイカイキイキイクイクイケイケイ・・・のところなど特に楽しそうだ。それはコケカキイキイの仲間かい?
 結局、教えられた「妖怪のポーズ」「ウォッチのポーズ」もうまく出来ず、「ウィッス!」のとこだけドヤ顔で腕を組みながら「知らぬところでドえらいブームが発生しているのだなあ」と唸るしかなかった。
 おれ、妖怪のヒット曲って「ぺったらぺたらこ」しか知らないからさ・・・。

 で、どうして今回「ようかい体操第一」の話から始まったかというと、これが先月末の第14回定期軽トラ市公演からLovit's!のレパートリーに加わったのである。
 「暦の上ではディセンバー」「恋するフォーチュンクッキー」に続き「ようかい体操第一」をチョイスしたその選定眼に、妙な納得と「そこくるか!」のスリルと一抹の貪欲さを感じたが、この「新レパートリー」がその真価を炸裂させたのが、おととい(9月13日)二丈町で開催された「赤米鑑賞会」ライブであった。
 子供が多かったせいもあるが、とにかくウケがものすごい!
 音楽がかかるやいっせいに子供たちがステージをとりかこみ、なかにはステージにずんずんとあがっちゃうヤツまでいたりして、その「僕たち/私たちも踊らせろ」衝動ったら「おかあさんといっしょ」の最後らへん以上である。
 これが糸島の子供たちの気質によるものか、それとも「妖怪ウォッチ」ブームがさらに加速してのものなのかは定かでないが、それ以前のカバー・レパートリーだった「恋するフォーチュン・クッキー」が"宴会とかカラオケで踊れたら人気者だし〜"的「嗜み」のうえで成立していたものだとするなら、この「ようかい体操第一」はもっとプリミティブな欲求、ないしは「流れてきた→踊らねば」の条件反射に訴えかける、最もヤバいタイプのキラーチューンに思えた。
 カイカイキイキイクイクイケイケイ来い来い妖怪ウォッチッチ、でいっせいに手足をバタバタさせるLovit's!&子供たちをみて「これは強力な武器を手にいれたな・・・」とまたもや唸りつつ、うーん、すっげえ楽しそう。おれももう少し若ければ・・・。

   そして今。
 ステージ開始を数分後に控えて、撒き餌(ルビ:ビージーエム)の「ようかい体操第一」につられた子供たちがまた何事かとショッピングモールの広場に集まりつつあった。
 「まさか、これから・・・!?」の期待を、一見興味なさげを装ったクールな表情の裏に潜め、今か今かと着火の瞬間を待ち続けているのが傍目からでもよくわかる。
 そして、その瞬間はすぐそこまで来ていた・・・ってところで少し話を前に戻そう。

 hitマリナ通り住宅展示場で糸島市定住促進イベントを終えたLovit's!には、この日もうひとつ、東区香椎のイオンモール香椎浜で糸島市民まつりをPRする任務が控えていた。
 それを追って自分も西区から東区へ、博多湾沿いを車でぐるっと走りぬける。
 その日は日曜日で、しかも道すがらの東区筥崎宮では福岡を代表する秋のおまつり・放生会(ほうじょうや)が開催されていることもあり、香椎へと続く国道3号の大混雑が予想されたが、実際はそれほどでもなく、どちらかといえば、筥崎宮から進んだ先で発生した焼き肉屋さんの火事に因を発する交通規制にナンギな思いをさせられた。
 それでも早過ぎるぐらいの16時前には現地着。PRイベントは17時30分からなので余裕、余裕。

 16時30分すぎ、センターコートでステージの設営がはじまるとメンバーの皆さんも姿を現し、あたりの柱に糸島市民まつりのポスターを貼ったり、行き交う人々にチラシを配ったり、さらには椅子を並べたりと尊い準備に勤しんでいる。
 そういった地道な活動のかいもあって、開演前には多くのお客さんがステージのまえに集まっていた。
 前述のとおり、BGMの「ようかい体操第一」もまた良い集客材料になっている。
 今回、なんとステージと客席のあいだにロープじゃなくて、ベルトじゃなくて、なんていうんだろう、あのほら、仕切のオビ(調べたらベルトインパーティション、と言うらしい)が張られており、イオンモール(に限ったハナシではないが)でメジャーアイドルを観ると、必ずこのベルトインパーティションがもれなくついてくるので、「Lovit's!がメジャーアイドルの領域に足を踏み入れた!」とよくわからないところで感動する。
 個人的には「Magic Island」がメジャーレーベル発のオムニバスに収録されたときよりもステップアップを感じた瞬間であった。
 すぐ撤去されたんだけどね。

 Lovit's!メンバーがステージにあがって立ち位置などを確認しているあいだ、いとゴンもまたちびっこたちに愛想をふりまき、彼なりのPR活動に励んでいた。そんな彼の写真を撮っていたら、やや軽めではあったが久しぶりにお腹ムギューッをくらう。
 最初に会ったとき(=Lovit's!を最初に観たとき)にも、ゆるキャラとは思えぬパワーで腹肉をムギューッとつかまれ、ホントそのときは誇張なしで悶絶の悲鳴をあげてしまったのだが(あのときの感触、まだ残ってるぜ)、つきそいのお姉さんによればこの行為には「スキな人と結ばれるイワレがあります」だそうで、なるほどなあ。実はありがたい御業だったのか。一年以上越しでようやく遺恨が氷解したよ。
 逆につかみ返してもOKだそうで、こちらからもムギュギューと腹を揉んでさしあげる。ムギュー、ムギュギュー。

 17時30分。いよいよ待ちに待った開演のときがやってきた。
 司会者の役を仰せつかったあさきちゃんがまずはひとりでステージにあがり、本日のステージの主旨説明を始める。うおおお、このセリフまわしの慣れっぷり&完成っぷりといったらなんだ。すでにこういうお仕事をされている方のようにメリハリがあって、聴きやすく、澱みない。
 感心しすぎて「皆さん、こんにちわー!」に応えられなかったのをこの場を借りてお詫びしたい。

   あさきちゃんの素晴らしい挨拶に導かれて、Lovit's!の皆さん(あさきちゃんもいったんステージをおりてPR隊に再編入)がLovit's! Themeとともに元気よく登壇。
 しかし、うーむ、さっきのhitマリナ通り住宅展示場・糸島市定住促進イベントに続いて、ここでも開演前の恒例「今からLovit's!のステージがはじまるよ!」 ナシかあ。と、少々寂しく思っていたところ・・・ステージ中央で円陣をつくったLovit's!がそのまま「今からLovit's!のステージがはじまるよ!」「みんなーしゅーごー!」を公開敢行したではないか。しちゃったよ!
 なんて素晴らしい光景なんだろう!
 みんなして空を指し示したあとは・・・来た、「ようかい体操第一」だ!
 こちらが感動の余韻に浸っているそばで、待ってました、とばかりに子供たちがいっせいにギアを入れる(サーモグラフィでみればきっと面白い映像だったろう)。
 これが何のイベントかまだわかってない感じ満載の子供たちであったが、まんまと「ようかい体操第一」に踊らされているところをみると、Lovit'sはガッチリ彼らのハートをつかむことに成功した模様。このシチュエーションではLovit's!が体操のお姉さんにみたいになっていてそれも良い。フト振り返ったらいとゴンも踊っていた。
 君は妖怪じゃなくて怪獣のハズだが、そういうところ、抜け目ないよな。

 さんざっぱら子供たちのハートを掌握したあと、満を持してなるなるが「私たち、糸島PR隊Lovit's!です!」とあらためて正体をあかし、「10月4日と5日におこなわれる糸島市民まつりのPRをするためにやってきました」と今回の東区訪問の目的を告げた。
 まだ「妖怪ウォッチ」と糸島になんの関係があるのか見いだせぬまま、しかしすっかり暖まった、そして踊り足りない顔をしている子供たちに、その流れで「フリが簡単なのでマネしてください!」とオリジナル曲「いとくると」への移行を宣言する。
 なんてウマい作戦だろう。これで子供たちが喰らいつかないハズがない。そもそもPRなんて理屈じゃないのだ。
 事実、いと・いと・いと・いと・くる・くくる・くる・くる♪と手を動かすちびっこ達の姿があちらこちらで散見され、なんだかLovit's!が「ようかい体操第一」で釣った子供たちをそのまま糸島へ導く現代のハーメルンの笛吹きにみえてきたよ。
 さらにLinQさんのファンたちにも「Going My Way!」をサービスし、続く「Magic Island」ではセンターコートに集った全ての層の人々をぐわっと包みこみ、PRとしてはそれはもうカンペッキーとしか言いようのない、非の打ち所が見当たらない上出来すぎるセットリストが展開された。

 しかし、それだけでは終わらず、そこからさらに場を盛りあげたのがあろうことかアノ緑のアイツ、いとゴンである。
 あみなちゃんの「わたしたちの友達を呼びたいと思います!」→全員の「いとゴーン!」コールで招かれたアイド竜が「いとゴンのシマ」を踊るためフロアにスタンバイした途端、先ほどの「ようかい体操第一」どころじゃない勢いで子供たちが緑のもとへと詰めかけた。
 子供たちの予想外のブヒアゲっぷりに、先ほど撤去されたハズのロープというか、オビというか、なんだっけ、ええと、アレ(ベルトインパーティション!)が再びひっぱりだされ、いとゴンを幼き暴徒たちの手から守らんとフロアの左右に配備される。
 あみなちゃんによればいとゴン、今年も「ゆるキャラグランプリ」にエントリーして虎視眈々と一位を狙っているそうで、それもまた素晴らしい心意気であるなあ。
 よろしければ皆さんもご協力をお願いします。
 
 ゆるキャラグランプリ2014 エントリーNo.893(福岡県)いとゴン

 一瞬で「妖怪ウォッチ」を越える瞬間最大ブレイクを叩きだしたいとゴン。
 こうなったら怪獣ではあるが、糸島地産のおばけを率いて「妖怪ウォッチ」風味の活動を始めてみてはいかがだろうか。
 糸島でウォッチできる妖怪といえば、二丈の「血あび地蔵」、大入の「追ってくる六つの生首」、小田の「だいぐれん」(生前から鬼婆として知られていた老婆が、死してガチ鬼婆として復活。村のみんなで供養しても供養しても「そんな気休め供養で成仏できるほどおれはおめでたくないぞ!」と暴れまわったもんだから偉いお坊さんが地獄に叩き落とした) 、桜井の「釜負の幽霊」(釜を割ってしまった女中さんが、それを背負ったまま首を吊って、化けてでた)などが知られている。
 彼らの着ぐるみを引き連れ、Lovit's!と一緒にいろんなところでPR活動をすれば・・・どれも生々しすぎてウケそうにないなー!ないなー!
 やっぱりいとゴンはソロアイド竜で頑張ってください。ウィッス!

 糸島市民まつりは10月4日、5日に開催されます。
 http://itoshimamatsuri.com/


2014年9月15日月曜日

糸島市定住促進イベント


   福岡市は西区、愛宕山のふもとにあるhitマリナ通り住宅展示場にて「糸島フェスタ」なるイベントが催され、そこに我らが糸島PR隊 Lovit's!も出演するというので観にいってきた。

 これまでもhitは糸島からちょくちょく「出張 軽トラ市」を招いており、その旨が告知されたチラシをみるたび「だったらLovit's!も呼んでくれたらいいのにー」とボンヤリ思っていたので、今日は遂にその夢・・・は少しオーバーか。まあその、フンワリとした、ささやか過ぎる願望がひょっこり叶ったことになる。

 9月13日から28日まで開催される「hit 秋のファミリーフェスタ」では、本日の「糸島フェスタ」以外にもさまざまな企画が用意されており、例えば前日14日のゲストなど今をときめくあのジバニャン氏、翌週21日には烈車戦隊トッキュウジャーを呼ぶなど当代の人気者たちをズラリ取り揃えていたが、この2組を差し置いてもやはり目玉は「糸島フェスタ」および糸島PR隊 Lovit's!でマチガイあるまい。
 ちびっこには悪いがPR隊のほうが彼らよりプリチーで、イマジネーションに溢れているんだ(ジバニャン撮影会も「先着100組さまに整理券配布」とかそれなりに人気ありげな空気を漂わせていたが・・・!)。  

 そんな「糸島フェスタ」のメインテーマは、住宅展示場が主催しているだけあってズバリ「糸島市定住促進」。
 とってきた資料にささっと目を通してみると、糸島市が住民誘致のため「マイホーム取得奨励金」を設けたり、福岡銀行と連携して住宅ローン特別金利を用意したりと積極的に施策に取り組んでいることがわかり、フムフム、ホホーと頷いてはみたものの・・・なんというか、オトナの世界のハナシきわまりないっす!
 よくよく振り返ってみれば「映画を観る」「CD/本を買う」ばかりで、いちども「家を持つ」などという野望を抱いたことがなかった。
 底部にキャタピラがついててイザというときすぐ移動できる家や、庭に温泉が湧いててカピバラたちが朝な夕な入浴しにくる家や、各階に凄腕の武術家がいる塔の最上階に住んでみたいなあとか、そういう空想ならしたことはあるが、さすがに「(リアルにリアルな)家を持つ」は未知の領域だ。
 しかし、Lovit's!を追いかけ糸島のあっちこっちに足を踏み入れるたび「いい環境だなあ、こういうとこに住めたらよかろうなあ」と漠然ながら思わせられることは多々あったので、このあたり去年彼女たちと初めて出逢ったときから既に定住促進イベントは始まっていた!と云っても過言ではない。
 だもんで住めるものなら住んでみたいが、個人的には「糸島」こそ面積216.15平方キロメートルの巨大なLovit's!劇場だと思ってたりするから、そんな非日常空間に住むなんてとんでもございません!みたいなところもあるし、そもそも僕の根城がフクオカシのウェッサイ〜糸島市境まで数キロ〜みたいなところだから、わざわざ移住するまでもないというか、この「数キロ先の非日常」が愛おしかったりするのでやはり定住は今のところ考えられないなあ。
 ・・・そもそも、考える考えない以前にそんな資金、ないんですがね!

 資金がないからあきらめる、というのもなんだか口惜しいのでプランだけは錬ってみるか。

 とりあえず"海派"なので、志摩あたりに場所を絞ろう。
 あのへんならば芥屋花火大会の交通規制を気にすることなく、チャリンコですいーっと現地に行き来できる。あれ、ホントめんどうなんだよなあ。
 ・・・あっ、芥屋だったら、緑のアイツ、いとゴンの家があるじゃないか。少々の掃除やマッサージ、その他諸々の家事(この夏よく体調を崩されていたのも一匹ぐらしの不摂生がたたったのではないだろうか)とひきかえに、いとゴンの棲家=芥屋の大門に居候すればそんなにおカネもかからないんじゃね?
 というわけで、僕の定住促進計画はいとゴンに気にいられるところから始めたい。

 ・・・そんなふざけたことばかり考えている人間なので、今日のイベントは年齢確認必須のオールナイトイベントやドレスコードのある音楽鑑賞会とはまた違った「オトナ」のガチ雰囲気に(やや被害妄想気味だが)気圧されてしまい、なんだかかなり心もとない。
 だってさあ、ずらり建ち並ぶモデルルームに「庶民の持ち家」なんかほとんどなくって、もう「セレブの豪邸」と呼ぶのが相応しいような邸宅、いや、城塞ばかりなんだよ。
 このご時世、こんな家に住める人なんていないよ!と心のなかで突っ込んではみたものの、そんな哀しいひとりツッコミなどどこ吹く風でしっかり邸内見学をされている方達も当然いて、「お金持ちはリアルでいるのだなァ」なんてグウの音もでないありさま。そのなかにはアジアの富裕層らしき人もおられた。
 ここはやっぱりいとゴンと洞穴シェアみたいな策略を巡らせているとうへんぼくが居ていい場所ではないのだ。くやしいよ、おれはくやしいよ。

 そんな会場(どんなよ!)でのLovit's!ステージは「センターハウス」と呼ばれる展示場そのものを司る建物の正面、でやるとお客さんが入れないので、正面エントランスの左側にあるテラスでおこなわれた。


 11時。ファースト・ステージのはじまりはじまり。
 登場したのは9人で、残念ながられなちゃんとあゆかちゃんは欠席。
 当日の天気予報は「くもり」であったが、そんな推測を導きだした人間の浅知恵をあざ笑うかのように晴天に恵まれ、とにかくもう日差しが眩しいったらありゃしない。冷夏に苦しめられた福岡も9月に入ってからは「夏のぶんのお日様を補填します!」と云わんばかりの晴れ日をグイグイ天から押しつけられており、この日の最高気温も30度に迫る勢いであった。

 まず1曲目は「いきなりそれを持ってくるか!」の『いとくると』。
 いつもなら歌のまえに「『いと・いと・いと・いと、くる・くくる・くる・くる』の振りをまねしてください!」とアナウンスが入るところ、今回はそれ抜きでのぶっこみである。これは本気だ。本気で促進に来ている!
 「定住促進イベント」にはもってこいの愛が溢れる街・糸島讃歌が住宅展示場の隅々までに響きわたり、これはもう資金のあるひとなら確実に心を突き動かされたに違いあるまい。
 資金がない側のこちらは「どれぐらい経つと僕たちはオトナになれるの?」の部分で身につまされ、思わず泣きそうになってしまったが・・・。
 なにがイイ歳こいて"いとゴンちに居候"だ。反省したまえ!

 そんなダメ人間模様はさておき、続いて唄われたのは「Magic Island」。ダメオシだ。
 この歌がはじまると、それがどこであっても周囲が糸島のパノラマでぱーっと包まれるのだ。"Magic Island"糸島に暮らせば必ず得られるであろうエモーショナルな日々を疑似体験するのにこれほどもってこいの装置は他にない。
 なんてカンペキな促進イベントなのだろう。
 そこから「カロリーなんて」「HANABI!!」とLinQさんのナンバーが続けて投下され、傍らにいらっしゃった〜初めてLovit's!を観たとおぼしき〜男性がこのセットリストにいちいち感心しておられたので、ファン拡大促進イベントとしてもちゃっかり成功をおさめていたような気がする。


    恒例となった糸島市民まつりのPR(4日!5日!)も無事終え、楽屋〜センターハウス〜に吸い込まれるように戻っていくLovit's!の皆さん。
 えーと。
 いまが11時30分で、次のステージは14時30分からか。

 ・・・3時間後!

 さてどうしたものだろう。
 知らぬ土地であれば散策の愉しみもあるだろうが、このへんほとんど生活圏内である。なので、時間を潰すスポットが近辺に一切ないことも知っている。
 とりあえず道むかいにあるダイエーのフードコートでサブウェイ「ローストチキン・ハニーマスタードソース」を食べながら「ああっ、『牧のうどん』にしておけば良かった!せっかく促進してもらったのにフイになっちゃった(牧のうどんの本店は糸島にある)!」と人知れず口惜しんだりしたが、これ、すごくいらない情報。

 hitに戻ると、ちょうど糸島市民まつりのチラシを配布ついでにモデルハウスを見学したメンバーの方々が「なかにエレベーターがあった!」「お風呂がふたつもあった!」「キッチンがすごかった!」「三階だてだった!」と口々にその衝撃を報告してくださった。
 励ます(?)つもりで「こうなったらLovit's!御殿ですよ!」と声援を送ってはみたものの、なにが「こうなったら」なのか自分でもサッパリわからない。しかし糸島は「奇跡がおこる」町だから、Lovit's!御殿、もしくはLovit's!秘密基地、あるいはLovit's!記念館みたいな建物がいきなりポン!と出現しないとも限らないわけで。

 こないだも某有名ラーメン店の巨大パビリオン〜敷地面積約2万8000坪(東京ドーム2個分、といわれてもあまりピンとこないが)〜が糸島の山中にポン!と出現したのだが、そのなかに店鋪、生産工場のほか博物館なんてものまであり、「ラーメン屋の博物館ってなんだろう、一号店の椅子とか暖簾が飾ってあるのかな?」と思いながら入ってみると、そこには「トング」や「計量カップ」など(お店でつかわれているもの。当たり前だが、みてくれもきわめて普通)が偉そうにデーン!と並べてあって、思わず素っ転んでしまった。
 あれよりはLovit's!記念館のほうが断然見応えのある施設になるハズだ。
 たとえば歴代の衣装をはじめ、定期公演でつかった小道具、プラカード、メンバーひとりひとりが描いた「いとゴンカード」。ひしゃげた紙のお椀の隣には「iPPO Fes.にてめんたいキッドに壊されたうどんの容器」と記された説明カードが付されていたりするのだ。
 ああっ、行ってみたい。
 思わず想像だけで入場料を払いそうになった。
 ・・・はやく2部はじまらないかな!

 やや長過ぎるインターミッションのあいだ、会場では唄人羽(うたいびと・はね)さんによる糸島市イメージソング「輝く刻(とき)の中で」、門馬良さんによる「糸島市音頭」が絶えず流されていた。音響によるテラフォーミング・・・ならぬイトシマフォーミングのおかげで周囲の大気における糸島度がグングン濃密なものとなっていく。
 そうだ、こうなったらもう室見川のこっち側まで全て糸島市としたらいいじゃない!それなら僕も定住してることになるし、糸島新聞的にも西区はカバーの範疇だから問題ないだろう。それでいこう。
 ・・・はやく2部はじまらないかな!かな!

 14時30分。やっとこさセカンド・ステージのはじまりはじまり。
 それまで「あー、やっぱ天気予報って当たるものなんだな」的くもり空だったのが、Lovit's!登場の5分前いきなり青空に転じ、ここでも糸島のマジックを目の当たりにすることとなる。
 2部からはれなちゃんとあゆかちゃんも合流し、フルメンバー体制が堂々完成。
 披露された曲目は「Magic Island」、LinQさんのカバーで「for you」、「いとくると」、最後はやはりLinQさんのカバー曲「祭りの夜 〜君を好きになった日〜」。




 すべて聴き慣れた曲であるが、そのことがなんだか嬉しい。
 白糸の滝・芥屋の海・福吉の漁港・イリスロード・前原商店街などなど、などなどなど、などなどなどなど、いろんなところで彼女たちがこれらの曲を歌い踊る光景を観てきた。
 ちょっとまえまでは糸島なんて「唐津にむかう途中、通る街」ぐらいの認識しかなく、目的ありきで行くとしても伊都菜彩に買いだしに行くぐらいのものだったのが、今ではほぼ毎週当地に通っている。
 それどころか、いつしか知らぬ土地で知らぬ風景、特産物、史跡にであえばすぐに調べ、そこから当地の歴史の本、風土記、糸島新聞までチェックするようになってしまった。
 そして、そうやって得た知識がLovit's!を観た記憶と結ばれ心の糸島地図に次々と刻み込まれていく。
 そこで僕は言いたい。
 「精神的にはもう定住していると言っていいんじゃないだろうか!」

 やっぱダメっすか。
 じゃあ半定住で・・・そんな言葉もないっすか。
 うーん、「促進の果てに定住!」というゴールを決められればすごく格好いいんですけどねえ。
 はあー(タメイキ)。

 じゃあやっぱアレだな。
 ・・・いとゴン、どんなお菓子をもっていけば喜んでくれるだろう?