2014年9月21日日曜日

福田こうへい歌謡ショー


 アイドルというフィルターを通して糸島の魅力をポップにキュートにひろく伝える存在といえば、せーの、「える!おー!ぶい!いー!いとしまらびっーつ!」でーすーがー、実は彼の地は演歌のひときわ盛んな土地であったりもする。
 伊都文化会館のまえを通るたび大物演歌歌手のコンサートやカラオケ大会の告知ポスターを目にするのは、そういう文化がしっかり根づいてることの証と云えよう。
 で、そんな豊かな土壌があるから、この街からはモノホンの演歌歌手も当然産まれている。

 まず、糸島を代表するスターとして、ひょっとしたら篠田麻里子さん以上の活躍をされているかも知れないのが「手の届くアイドル演歌歌手」こと山内惠介さんだ。このかたは日本全国津々浦々をまわって1年間に120回もの営業(握手会)をこなし、フィギュアつきDVD-BOXは予約開始とともに瞬殺完売、天下の松竹で主演映画「山内惠介・THE歌謡ムービー昭和歌謡危機一髪!」までつくられてしまった、名実ともに"演歌界の貴公子"である。
 これらの活躍によって糸島市長から直々に「糸島ふるさと大使」の任をまかされ、日々"ふるさと"のPR活動に勤しんで〜ディスコグラフィみたら「流氷鳴き」「風蓮湖」「釧路空港」・・・って北海道関係の曲ばかりなんですけどー!〜おられるようだ。
 ちなみに今年のどんたく前夜祭には、この山内惠介さんと今をときめくRev. from DVLがゲストとして呼ばれていたのだが、実にそのファン比率&熱量、誇張なしの1:50で山内惠介さんクラスタが圧倒していた。ファンのおばちゃんたち、すごかった。

 そんな山内惠介さんを糸島演歌界"ピンからキリまで"の"ピン"とすると、"キリ"にあたるのが本多あきらさん・・・といっても全然ピンとこないだろう。
 この人はかつてジャッコ、ないしは伊都ジャス(正式名称・イオンモール福岡伊都)の近所で「I am Dog」というペットショップを経営していたドッグトレーナーで、タブロイドによれば自らデヴィ夫人の愛犬もなされていたとされる。
 彼も(おそらく"飼い主"によるバックアップのもと)2008年にホスト演歌「男の浪漫」で演歌界に殴りこみをかけ・・・ようとしたところで、長崎バイオパークからリスザル、カピバラ、フンボルトペンギンを盗んでいたことが発覚、あえなく御用となった。
 売買目的で犯行に及び、その経過でカピちゃんたちを死なせてしまったのである。ゆるせない。

 このように頂上からドン底まで、振り幅がとってもひろーい糸島歌謡界。
 これほどのレンジがあるということは、やはりその背景には豊潤な大地が広がっているのだろう。
 いつかその空気に触れてみたい、その世界と「背景」を覗いてみたい、と思っていたところ、伊都文化会館で催される福田こうへい歌謡ショー・第一部に糸島PR隊Lovit's!が客演するとの知らせが耳に入った。
 これぞ我が意を得たりまくったりのスペシャル・イベント。行くしかない(実はこれまでにも何度かこういうチャンスはあったのだが、なかなかタイミングに恵まれず行けなかった)。

 不勉強ゆえ、福田こうへいさんも薄ぼんやりとその名前だけしか知らず、一応ググッてみる。
 岩手県出身の福田こうへいさん(1976年うまれ)は、デビュー・シングル「南部蝉しぐれ」で平成25年第64回紅白歌合戦に出場を果たした民謡・演歌界の若きホープだそうで、当時の紅白では紅組代表AAAと対決、白組のリストには三代目J Soul Brothersとサカナクションのあいだに名を連ねていた。
 ふむ。なるほど。
 ・・・これだけでは全然なので岩手の友人に「そちら地元ではどれぐらい人気があるのでしょう?」と伺ってみたところ「イオンのインストアライブ基準で言うとファンモン加藤とタメはれるくらい人気あるよ!」との解答を頂き、まずその基準はなんだ、とか、そのファンモン加藤さんの人気がわからないよ、とか余計にいろいろひっかかってしまったが、とにかく凄い人だということはなんとなくわかった・・・かな。

 入場料は4000円。
 ううむ、おなじ価格&おなじLovit's!目当てでもFukuoka Girls Festivalとはまた違った割高感がある。
 しかし!実は先日赤米鑑賞会にいった際に「まむしの湯」で割引券をゲットしていたので、今回はそれが使えちゃうのだ。
 4000円→2000円。
 いやまあ、それでもけっこうなお値段だけど、価格的にはアイドルさんがいっぱい出演するタイプのイベントに近いものがあるし、そっち系のイベントと構成&出演時間もそんなに変わんないだろうし、なにしろ精神的には既におじいちゃんなので、なにげにこういうイベントのほうが若者言葉でいうところの「俺得」感があったりする。
 なので、全然余裕で払えてしまう金額だ。
 普段、無料で素晴らしいものをたくさんみせて貰ってるので今日ぐらいは、みたいなところもあったりして。

 イオン志摩ショッピングセンターで「秋の交通安全運動」イベントを観たあと、叩き込まれたばかりの交通安全精神を遵守しながら自転車で伊都文化会館に向かう。
 割引チケットには「10時30分より入場券と交換受付」とあったが、「まあ、そんなに急がなくてもいいだろう」と楽観視し、のんびり11時過ぎにイトブン入りしたところ・・・既に長!長!長蛇の列ができてるじゃないの!
 慌てて入場受付窓口に走り「もうこのへんしか空いてないんですよ〜」と提示された席は左側二階席の最奥ブロック。「・・・それで大丈夫です!」
 伊都文化会館はどこからでもステージが観やすい立派なホールなので「大丈夫です!」にウソ偽りはなかったが、まさかここまでの人気とは。糸島演歌ファン(及び、こうへいファン)侮れじ。
 チケットを買ってすぐ「2000円席は完売しました」と書かれた紙が貼りだされ、九死に一生を得る。あぶない、あぶない。

 本日の歌謡ショーは昼の回と夜の回があり、メインの「福田こうへい 歌謡ショー」のまえにはいずれも2時間程度のフロントアクト「地元の皆様の歌謡ショー」が設けられていた。
 Lovit's!はこの「地元の皆様の歌謡舞踏ショー」部分に登場するそうだ。
 入り口で頂いたプログラムには31組(!)の「地元の皆様」の名前と、それぞれが唄う曲目が記されており、最後から4番目に登場するなかなかイイ扱いのLOVit's(原文ママ)さんの欄には「マジックアイランド」(原文ママ)および「糸島市音頭」の2曲からなるセットリストが既に明示されていた。
 こういうカタチでセトリのネタバラシをされるのは初めてだが、この世界のルールではこれが普通なのだろう。郷に入れば郷に従え。実は先ほどの交通安全運動イベントで「マジックアイランド」が聞けなかったことを少し残念に思っていたので、けっこう嬉しい先制予告だったりして(かわりに「なう。」を唄っていたのは"事故を起こさないよう公共の交通機関を使え"というメッセージだったのかしら。自動車でも自転車でも、運転中に携帯をいじったりツイートしたりするのはやめましょう)。

 少し外で時間をつぶし、開演5分前に会場に入ると、なんと既にショウが始まっていた。
 キンキラキンのスーツを着た男性が女性ふたりを傍らにはべらせ、ものすごいイイ湯加減で「博多 唐津よ 波戸岬〜♪」と熱唱している(黒木姉妹「泣かんとよ」)。はてさて、これはどなただろう?とプログラムに目を通すが・・・どこにも男性+女性2人の逆ドリカム体制出演者の名前がない。しょっぱなからこれかよー(あとで一番手の方だとわかったが、プログラムには女性二人の名前しか記載されておらず、ではあの男性はナニモノだったのだろう?このしょっぱなのパンチにより、糸島歌謡界も油断できない世界だと痛感させられた)。

 それにしてもフツーなら「第一部は一般の参加者さんばかりだし、観なくていいかもー」となりそうなところ、会場にはたくさんのお客さんが詰めかけ、やはり演歌に対する関心の高さというかスキスキっぷりがグイグイ伝わってくる。
 出演者それぞれにアツい声援がとび、素人さんといえどファンからおひねりや花束が次々届けられる、なんともホットな空間。

 Lovit's!関連(なのかな)といえば、エントリーナンバー4番の女性が中村美津子さんの「河内おとこ節」を唄っておられて、この曲、ケアプラザ伊都(2014年7月19日)の公演であさきちゃん・あみなちゃん・れなちゃん・あゆみちゃんが御神輿を担いでいたときのBGMだったことを思いだす。あのとき曲名がわからずレポートでは濁してしまっていたので、やっとわかって良かったです。

 良かったといえばエントリーナンバー8番の男性が唄った「あなたのブルース」がことのほか素晴らしかった。矢吹健に1968年度のレコード大賞新人賞をもたらした大名曲〜いまでは夜のワーグナー・藤本卓也先生の手になる解放歌謡のマスターピース〜として知られる「♪あなたあなたあなたあなた、あ〜な〜た〜」が、まさにブルース!といった情感たっぷりの絶唱で紡がれる。
 Lovit's!を観にいって『あなたのブルース』が聴けるなんて、こんな体験もなかなかできまい。いろんな意味で感動した。

 気になったのは、"こういうイベントだからそれにあわせてきた"のか、それとも無自覚のなせる業かわからないが、本日のメインアクトであられる福田こうへいさんの「南部蝉しぐれ」を課題曲に選んでいる人が4組もいらっしゃったことで、えっ!こんなことしちゃっていいの!?とまた門外漢はビックリする。
 これでは御本人が「南部蝉しぐれ」を唄うまえにお腹いっぱいになっちゃうじゃないか。
 SUMMER SONIC14・TOKYOのGARDEN STAGEで例えれば、矢野顕子(トリ)の「春先小紅」をその前の出演者たち〜前野健太→華原朋美→山崎まさよし→LITTLE DRAGON〜がよってたかって歌い尽くしちゃうようなものだ・・・どれも聞き応えがありそうだな。
 逆に、そこでさんざん焦らして「ホンモノが聴きたい!」と思わせる効果もあったりするのだろうか。
 しかしそのあたりもよく考えられていたというか、完全に偶然かも知れないが、おなじ「南部蝉しぐれ」でもそれぞれに歌唱のスタイルが異なり、女性/男女混成15名によるコーラス/男性/女性(オケが民謡バージョン)と、それぞれに飽きさせない趣向が自然と凝らされていた。
 それにしても出演者さんどなたも歌がうまく、こういうところに来たのも初めてなので新鮮さもあいまって、2階席後ろすぎブロックではあったものの、全て食い入るように観てしまった。

 んで、13時も過ぎ、地元青春歌謡の大本命!糸島の若きニュースターLOVit'sが登場する。
 2階席最奥ブロックからでもステージは余裕で観えたが、さすがにその、ここだけはちょっとワガママを云ってみたくなり、会場スタッフのかたに「Lovit's!のときだけ前の端っこのほうで立ち見していいでしょうか」とお願いしたところ・・・快諾して頂きありがとうございます!大感謝!

 登場を前に、暗転したステージの奥で「国宝 内行花文鏡」の文字と原田大六先生が平原遺跡にて発掘された日本最大級の銅鏡が描かれた垂れ幕がするるーんと降りてくるのがみえた。おお、なんだか特別扱いじゃん!

 司会者さんの「大きな拍手でお迎えください!」にホントに大きな拍手で迎えられながら元気よく登場したLovit's!メンバー(れなちゃんとあゆかちゃんが欠席)。
 朝の交通安全イベントではゴスロリ風味バージョンの衣装をお召しになられていたが、こちらではうってかわって皆さん浴衣衣装だ。
 これだけで「そうだよな、やっぱりこの場面では"和"だよな!」と、託されたビデオカメラを放り投げガッツポーズしそうになったが、高価な機材ゆえ我慢我慢。ソフトクリームとか素焼きの植木鉢なら躊躇することなく放り投げてた。

  一曲目は「マジックアイランド」(マイクはひびきちゃん、あんぬちゃん、あみなちゃん)、ずっと演歌で続いてきた流れにいきなり放りこまれたザ・アイドルポップスだが、会場に集まった皆さん、笑顔でステージに手拍子を送ってくれている。おばあちゃんたちからは「かわいい」の声もとぶ。
 しっかりとした照明や舞台装置、音響のなかでみるLovit's!はまた格別。定期公演やイベントとはまた違う、演者さんと観客がかっちりとした演芸の様式のなかで結ばれるような、ものすごくハートウォーミングでスケールのデカい空間がそこにはあった。
 さすがイトブン、糸島のマジソン・スクエア・ガーデン!
 
 続いては「糸島市音頭」。メンバーがマイクを握ったまま立ち位置に移ったので「これは、遂にLovit's!があの歌を・・・!」と一瞬コブシを握ったが、そこはやっぱり門馬良さんの歌唱音源にあわせて踊るスタイル、ですよね〜。
 これもこれで可愛らしくて良いが、ファンとしてはいつかLovit's!歌唱バージョンを聞いてみたいものだ。そうめんそうめん。

 アイドルのイベント会場ではちらほらはっぴを着た方々をお見かけすることがある。
 こちら伊都文化会館の最前にもそんなはっぴ軍団がかたまっていらして、Lovit's!も強い軍団がついたな、と思いながら誰推しかを確認すべくチラッとその背中〜フツー「○○命!」「○○親衛隊」みたいなことが書かれている場所〜を観ると、そこには「国宝」の文字と銅鏡の絵がデカデカとプリントされていた。。
 おそるべし、内行花文鏡親衛隊。
 だもんで「ああ、これはそのうち皆さんでステージにあがって一緒に踊るんだな」と納得したが、意外とそうでもなかった。あがればよかったのに。

 そろりそろりと反対側に廻りこみ、あさきちゃんがベタ褒めしていた「あゆみの投げキッス」(発言ママ)をしかと観る。たしかにかわいかった。そうめんそうめん。
 最後、はけぎわに国宝法被の方々がなにかおひねりらしきものを渡していて超うらやましく感ずる。
 あれ、いちどやってみたい・・・!

 そのあとも全盲の演歌歌手・牧山ひろしさん(キングレコード)の素晴らしい歌声にシビれ、なんだかんだで天神地下街どんたく演舞台において2年連続ステージを拝見している入江みち子さん(キングレコード)の「愛ひととき」はやっぱイイ歌だな、と思ったり、最後まで唸らされっぱなしのコンサートでした。

 帰りがけ、運営スタッフさんに伺ったところ、やはりほとんどの出演者の方々が糸島出身なのだそう。「こんなに唄うのが好きな人々がいる街もあまりないと思うのですが、どうしてですかね?」と兼ねてよりのハテナをぶつけてみたところ「みんな祭り好きだからですかね!わははは!」と豪快な答えがかえってきた。なるほどなあ・・・。

 文化会館の玄関をでて一、二、三歩すすんだあたりで「えっ、答えになってなくね!?」と声をあげてしまったが(いつにもましてニブい)、その"祭り好き=なのでステージに自分もたちたい、何かを表現したい"という血がおじいさんおばあさんにはカラオケ、若者には〜例えば二丈絆太鼓であったり、Lovit's!であったり、またはダンスであったりといったような感じで〜受け継がれているのなら、こんなに豊かな環境もないんじゃないだろうか、と思った次第。
 そして、そのひとつの集大成が、やはり30組近くの団体がステージに登場して歌ったり踊ったりを繰りひろげる「糸島市民まつり」なのかもしれない。
 市民まつりに対する考えが少し、アップデートされた。

 糸島市民まつりはまもなく10月4日、5日に開催されます。
 http://itoshimamatsuri.com/

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